100年続くレモン事業を目指して。ポッカサッポロが挑む「レモン素材開発」の裏側

ポッカサッポロは2025年1月1日に「レモン技術開発部」を設立しました。その背景にあるのは、私たちの使命「未来の食のあたりまえを創造する」を実現したいという想いです。
 
レモン加工の基盤技術を創り、食品素材として未利用の余地が大きかったレモンの搾汁残渣(果物や野菜などを搾ってジュースを作る際に、液体を絞り取った後に残る固形物のこと)から新しい素材を生み出し、「おいしい以上の価値」をお客様に届けたい。そんな強い想いを持って挑戦しているレモン技術開発部を代表して、部長の奥田秀泰さん、研究員の服部幹也さん、巻本亜樹さんにお話をうかがいました。
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(写真中央)研究開発本部 レモン技術開発部 部長 奥田 秀泰
(写真右)同部 服部 幹也(レモンオイル開発担当)
(写真左)同部 巻本 亜樹(レモンポリフェノール開発担当)

― まず、そもそもレモン技術開発部が設立された背景を教えてください。

奥田:ポッカサッポロには、大きく分けて「レモン」「飲料」「スープ」の3つの事業があります。サッポログループで掲げた中期経営計画に沿い「レモン総需要の拡大」を全社方針として掲げ、市場環境の変化に応じた事業転換を進めています。その戦略の一環として、今後はレモン事業を経営の中心に位置づけることを定めました。

同時に、レモンの栽培生産から携わる体制も整ってきたので、今後さらにレモン事業を成長させるためには、レモンにまつわる基盤技術の強化が不可欠だと考えたのです。そういった経緯から「レモン技術開発部」が発足しました。
―具体的に「基盤技術」とは何を指し、どのようにレモン事業の未来を支えていくのでしょうか。

奥田:レモン事業における基盤技術とは、上流工程であるレモン生果から果汁やオイル、果皮などの素材を加工する技術を指しています。

現在、力を入れているのが、生果から果汁を搾った残りである「搾汁残渣(さくじゅうざんさ)」を活用するための技術開発です。これまで、搾汁残渣の一部は食用に加工されてきましたが、多くは飼料となり、有効活用はできていませんでした。

私たちの部署では、搾汁残渣からエキスやオイル、レモンポリフェノールといった有用素材を抽出し、活用する技術の確立を進めています。こうした取り組みを通じて、サステナブルな事業を実現し、レモンを通じた“100年企業”として永続的に収益を生み出すことが私たちの最終的な目標です。
奥田:MVVはメンバー全員が参加した合宿で議論してまとめました。皆の想いが結集しているMVVになります。

まずMissionは「レモンのおいしさや健康の魅力をお客様に伝える基盤技術をつくること」です。私たちが開発する技術を通じて、レモンのおいしさや健康機能を、より多くのお客様に届けることが私たちの使命だと考えています。

Visionは「我々が世界に通じるレモン素材加工のスペシャリストであり、我々が創造した基盤技術を実用化・実装化できている状態」としました。

レモン加工のスペシャリストとして誇りを持って研究開発に取り組むからこそ、その成果をきちんと素材や最終商品として実用化できるところまでやり遂げたいと考えています。

Valueには「社内外のパートナーとつながり、お互いの知識・経験を融合し、お客様のニーズをカタチにします!」「原理原則を重んじ、挑戦的に、主体的に、レモンの新技術を創造します!」「自らの想いを込めて語り、周囲を巻き込み高い壁を乗り越えていきます!」の3つを掲げました。

社内外の方々と協力することで、自分たちだけでは実現できないこともできるようになると考えているため、私たちは意識的に社外に飛び出し、他社の方々との出会いの機会を大切にしています。

また、実験や研究には、感覚ではなく原理原則を大事にする姿勢が不可欠です。同時に、挑戦的な目標を立て、自ら主体的に動いてレモンの新しい技術を創っていく。これは、私たちの決意の宣言でもあります。

研究開発職は理論やデータを重視するものですが、困難な課題に取り組むときこそ、パッションを込めて伝えることが周囲の協力を得るために必要だと考えています。
―実際に現場で日々研究に取り組んでいる服部さんと巻本さんは、このMVVをどう受け止めていますか。

服部:特にValueの1つ目は意識していますね。私たち研究員は「どんな研究成果を出すことができれば、根本の課題が解決されてお客様のニーズを満たせるのか」を常に考える必要があります。

また、関係部署との対話により、自分の研究テーマの課題と、お客様のニーズとのつながりに対する理解が深まることがあります。そういった経験が次のステップに進むために必要なスキルや知識の可視化につながり、研究員の自発的な成長を促し、最終的に有益な研究成果を生み出せると考えています。

巻本:私がいつも心に留めているのは、Visionに掲げられている“レモン素材加工のスペシャリスト”というフレーズです。

研究所内にはいろんな分野のスペシャリストがいます。私は入社2年目で経験は浅いのですが、先輩たちに教わった知識や技術を身に付けつつ、自分だけの専門領域を見つけていきたいと感じています。そのため、さまざまな研究分野にも取り組み、日々仮説の立案と検証を重ねています。将来のありたい姿は、”レモン素材加工のスペシャリスト”ですので、まずは加工技術や素材の特性を理解するため、たくさん手を動かすことを心がけています。
―レモン技術開発部ではどのような体制で研究を進めているのですか。

奥田:現在、レモン技術開発部で進めている研究テーマは8つほどあり、同じ研究テーマを3人程度のチームで担当しています。基礎研究の成果が出たら、工場内で設備を立ち上げる役割を担うメンバーにバトンを渡すといった、役割分担を行っています。
―服部さんは、搾汁残渣をアップサイクルしてレモンオイルを抽出する研究を進めているそうですね。

服部:はい。搾汁残渣の果皮に含まれるオイルの抽出技術の研究をしています。3種類の抽出方法を用いることで、それぞれ異なる香りのオイルを取り出せることがわかってきました。
―レモンの香りを研究することで、どのような可能性があると考えていますか。

服部:香りは感情に大きな影響を与えることが知られています。レモンの香り成分の研究を通じて、レモンのどんな香りが人にどのような気持ちを想起させるのか、そういった関係性が明らかになれば、新たなレモンの価値の発見につながると期待しています。

例えば当社商品の「ぽっかぽかレモン」のような、「ほっとしたいとき」や「落ち着きたいとき」に飲んでほしい商品にさらに香りを加えることで、より高い価値を提供できるかもしれないと考えています。
―巻本さんは、レモンポリフェノールを搾汁残渣から抽出する研究をしているとうかがいました。

巻本:搾汁残渣からレモンに含まれるポリフェノール(植物が本来持つ抗酸化成分)などの有用素材を抽出して、活用する技術の確立を目指しています。

研究を進める中で難しさを感じるのは、素材としてからだにうれしい機能を持つレモンポリフェノールのみを、搾汁残渣から取り出すことそのものです。レモンの果皮から抽出液を作り、ポリフェノールをできるだけ多く抽出させます。その後、不純物が混ざった状態から、精製や分画と呼ばれる工程を経て、目的のポリフェノールだけを回収する操作が必要です。シンプルだけど難しい、だからこそおもしろいと感じています。

―巻本さんの研究と既存製品の関係についても教えてください。

巻本:レモンから抽出できるポリフェノールのひとつであるヘスペリジンは、水に溶けやすい形(*)に加工され、既存製品の「キレートレモンMUKUMI」に使われているんです。
*モノグルコシルヘスペリジン(あるいはモノグルコシル化)

この製品は私の入社前から販売されていて、入社後にその追加検討も担当させていただきました。 もともと好きだった製品の開発に関わることで、ますます愛着を感じるようになりましたね。

―今後はどのように研究を進めていく予定ですか。

巻本:今後は実装化に向け、製造可能な状態へステップを進めていく予定です。

そのために、段階や規模感、優先順位を踏まえながら地道にデータ取得に励んでいます。もちろん、想定とは異なる結果が出ることもよくあるのですが、そういうときこそワクワクしながら、何が起こっているのかを考察しています。

先輩たちにもよく相談します。部内はベテランも多いのですが、優しい方ばかりなのでとても相談しやすい環境です。どの先輩も、難しい課題でもしっかり結果を出されるので、私もそんな仕事ができるようになりたいと思っています。
―成分を抽出する技術を開発して商品に使える素材を生み出すまでには、さまざまな段階があるということですね。

奥田:その通りです。レモン技術開発部は、基礎的な技術の開発はもちろんですが、製造ラインで素材を作るための技術開発や、必要な設備の試験も行います。

私たちは2つの拠点に分かれて活動しています。巻本が所属している焼津の拠点では、基礎的な実験を行なっています。一方、服部と私が所属している北名古屋の拠点では、プラントと呼ばれる中規模スケールの設備でテストを行い、実際の工場での製造に向けた準備段階までを担当しています。

―実際に製造に向けて研究が進んでいるものもあるのでしょうか。

奥田:巻本が担当するレモンポリフェノールなどは、2026年春から少しずつ実装ラインでの検討を開始することになっています。一部のテーマは3年後を目処に実現させ、5年後にはより多くの研究を実装につなげていきたいですね。

我々の最終的な目的はモノづくりですが、レモン技術開発部は“技術をつくる部署”でもあります。そのため、社内外から「レモンを使ってこういったものを作りたい」と言われたときに、すぐに提案できる技術を持っておくことも大切だと思っています。将来に向けた「技術の蓄積」を行うことも、私たちの重要な役割です。
―服部さんと巻本さんは、これから先どんな思いでレモンの技術開発に挑みたいと考えていますか。

服部:すでにレモンが持つ爽快感や健康的なイメージがもっとよくなる可能性があると考えています。

私が研究しているレモンオイルも、香りがいいだけでなく、もしかしたら新たな健康機能性が含まれているかもしれません。将来的には香りの技術が当社の根幹を支える技術となり、今後レモン以外にも展開していけると嬉しいです。

巻本:私の研究テーマであるレモンポリフェノールは、他の原料のポリフェノールより抗酸化能力が高く、そこから派生する健康機能も明らかになっています。

大学時代から健康に寄与するモノづくりをしたいと思っていたので、この研究テーマを担当できてよかったと思っています。機能性表示食品である「キレートレモン MUKUMI」に続く、さらなる機能性を備えたキレートレモンシリーズや、より幅広い商品化を目指していきたいです。
―奥田さんにもレモンの技術開発を通じて実現したい思いを改めてうかがいたいです。

奥田:私も入社以来、研究職として難しいことに挑戦することにいつもワクワクしてきました。そうやって挑戦を乗り越えて、会社や仲間に貢献すること、さらには社会にとって新しい価値を提供することが情熱の源泉になっています。

私の夢は「レモン=ポッカサッポロ」という存在になること。つまり、レモンのことでは、日本に限らず、世界中のどの企業にも負けないNo.1のレモンカンパニーにするということです。レモンの基盤技術を地道に研究し続けた結果が、やがて他の柑橘分野へと飛躍していく。そんな姿を思い描いています。

―私たちの使命である「人と社会と向き合い、未来の食のあたりまえを創造する」とレモン技術開発部の取り組みは、これから先どのように結びついていくのでしょうか。

奥田:これまで食品会社は、安くて安全でおいしいものを提供することを求められていました。

しかし、社会が変化していく中で、環境課題とも向き合いながら収益性とサステナビリティを両立させることが企業の責任となってきています。

ポッカサッポロにとっては、その象徴が国産レモン生産振興への取り組みです。生産したレモンを余すことなく有効利用することを考えていく。搾汁残渣からもレモンポリフェノールやレモンオイルといった新しい素材を生み出す。まさにこれこそが、私たちが実現しようとしている「未来の食のあたりまえ」なのではないでしょうか。その思いを胸に、これからも日々研究に向き合っていきたいですね。

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