ビール酵母の研究と発酵技術で、ビールの香味を制御
ラガービールの醸造に用いられる下面発酵ビール酵母(Saccharomyces pastorianus)は人類のビール醸造の長い歴史の中で利用された酵母で、有性生殖能の低下、マルトトリオース資化能の獲得など、人間にとって都合の良い、ビール醸造に適した様々な特性を保有しています。下面発酵ビール酵母はS.cerevisiaeとS.eubayanusのハイブリッドであることが知られ、真核生物のモデル生物であるS.cerevisiaeとは異種の生物ですが、モデル生物で世界中の研究者が蓄積した膨大な知見の一部を発酵技術に活かすことができます。しかし発酵中の香気成分や呈味成分の代謝の挙動等、発酵による物質変換メカニズムの多くは現在でもブラックボックスとなっています。サッポロビールではビール酵母の研究で得られた知見や、長年のビール醸造で培った経験則を活かして発酵を管理し、ビールの香味を制御しています。また研究開発を通じてその制御技術を更に高めていこうと日々努力しています。
ビールづくりでは、麦芽とホップからつくられる麦汁に酵母を加えて発酵させます。サッポロビールでは、商品に合った優秀な酵母を選抜するために1,000株を超える酵母バンクを保有し、「発酵技術」の研究を重ねてきました。現在は、発酵技術の新たな分野への応用に挑戦しています。その一つが、微生物の発酵の力を活かして農業残さからバイオ燃料をつくる研究。2018年、サッポロホールディングス(株)は「キャッサバパルプからのバイオエタノール生産」で第27回地球環境大賞において「農林水産大臣賞」を受賞しました。国内外で長年にわたり当グループが酒類製造で培った醸造技術を応用したバイオマスエネルギーの技術開発を進めてきた成果です。また、ビールの風味を損ねてしまう乳酸菌の研究を経て、植物性乳酸菌の健康機能に着目した研究も行っており、私たちが発見した「SBL88乳酸菌」の商品化につなげています。このように、発酵をコア技術とした新たな取り組みが始まっています。